記事: 天然由来と合成の違い。「天然は安全、合成は危険」は本当?
天然由来と合成の違い。「天然は安全、合成は危険」は本当?

「天然由来の成分は安全で、合成成分は危険」。ヘアケアやスキンケアの話題になると、こうした認識に出会うことは少なくない。「石油由来」「合成界面活性剤」といった言葉に、漠然とした不安を覚えたことがある人もいるだろう。だが、この図式は、実際にはかなり単純化されたものだ。ここでは、天然由来と合成の違いを、できるだけ正確に整理してみたい。
「天然由来」と「合成」は、そもそも何が違うのか
大まかに言えば、「天然由来」は植物・鉱物・動物など、自然界にある原料をもとにした成分のこと。「合成」は、化学反応によって人工的につくり出された成分を指す。ただし、この線引きは見かけほどはっきりしていない。化粧品に使われる成分の多くは、自然界から採った原料をそのまま配合しているわけではなく、抽出や精製を経て、場合によっては加水分解やエステル化といった化学反応を加え、使いやすい形に整えられている。たとえば、ヤシ油などの植物油脂を原料に、化学反応を経て洗浄成分に仕立てたもの。これは「天然由来」と呼ばれることもあるが、その工程には化学合成が含まれている。
つまり「天然由来」とは、原料のルーツを示す言葉であって、「手を加えていない」ことを意味する言葉ではない。さらに、化粧品で「天然由来」という言葉をどこまで使ってよいかについて、国が統一して定めた基準は、ないとされている。国際規格(ISO 16128)には、天然由来の度合いを数値(指数)で示す考え方が整理されているが、これは製品の表示そのものを決めるためのものではない。言葉の使い方は、つくり手の判断にゆだねられている部分が大きいのだ。
天然=安全、とは言い切れない理由
自然界を見渡せば、すぐにわかることがある。ウルシは触れるだけでかぶれる植物であり、蕎麦は人によっては命に関わるアレルギーを引き起こす食べ物だ。天然のものであることと、人体にとって穏やかであることは、まったく別の話なのだ。
化粧品の成分でも事情は同じだ。植物由来の精油や香料には、アレルギーの原因(アレルゲン)となる成分が含まれていることがある。欧州には、化粧品に特定の香料アレルゲンが含まれる場合に表示を義務づける規則があり、その対象には、精油に天然に含まれる成分も少なくない。また、柑橘類の精油の一部には、塗った部分に紫外線が当たると肌が炎症を起こす「光毒性」を示すものがある。
天然の成分は、さまざまな成分が混ざり合った複雑な集合体でもある。産地や収穫時期、その年の気候によって含まれる成分の組成が変わることもあり、品質を一定に保つのが難しい。これは天然の成分が悪いという意味ではなく、予測しづらい要素を抱えやすい、という意味だ。
合成=危険、とも言えない理由
合成成分の強みは、つくり方や純度を管理できることにある。不純物やアレルゲンになりやすい成分を取り除きやすく、いつ使っても同じ品質のものを安定して得られる。人の肌にもともと存在する成分と同じ構造のもの(ヒト型セラミドなど)を、合成や発酵といった技術で安定的につくり出している例もある。
環境の面でも、天然資源の採取には限りがある。特定の植物を大量に必要とすれば、乱獲や農地の拡大につながるおそれもある。合成によって、資源への負荷を抑えられる場合もあるのだ。
「石油由来だから危険」という言い方も、同じように単純化されすぎていると思う。そもそも、水も塩も、私たちの体をつくる物質も、すべて化学物質だ。問題になるのは、その物質がどこから来たかではなく、どんな性質をもち、どれだけの量で使われているか、である。
では、合成成分に危険なものはないのか
もちろん、合成成分にも肌に合わないものはある。天然であれ合成であれ、刺激やアレルギーの原因になる成分は存在する。だからこそ、日本の化粧品には「化粧品基準」があり、配合してはいけない成分や、配合量に上限がある成分が定められている。この基準は、成分が天然由来か合成かを問わず適用される。安全性を左右する線は、「天然」と「合成」の間ではなく、「その成分が何で、どれだけ使われているか」の間に引かれているのだ。
なぜ「合成は危険」というイメージが広まったのか
理由はいくつか考えられる。まず、「合成」「石油由来」「化学」といった言葉の響きが、それだけで不安を呼び起こしやすいこと。そして、「無添加」や「ナチュラル」を打ち出すとき、その対比として「合成は悪いもの」という語り方が使われやすい面もあるのだと思う。不安をあおる表現のほうが記憶に残りやすい、という事情もあるだろう。誰かが悪意をもって広めたというより、わかりやすい二項対立が、いつの間にか定着してしまった。それが実情に近いのではないか。
AOMAの考え方:天然由来を軸に、合成の良さも活かす
AOMAの現在の処方では天然由来の成分、とくに植物由来の成分をメインに据えている。天然由来の成分は、合成成分のように単一の成分ではなく、さまざまな成分が混ざり合った複雑な集合体であることが多い。そのぶん、単一成分では出しにくい、複合的でパワフルな働きを期待できることがある。そこを狙って、特に頭皮ケアを重視した製品では天然由来の成分をメインに配合している。
ただし、「天然由来だから良い」「合成だから避ける」と考えているわけではない。合成成分には、品質を一定に保てる、働きを安定させやすいといった、合成ならではの良さがある。AOMAとしては、今後の製品展開でも、天然由来を軸にしながら、合成成分の良さも製品の目的や用途に合わせてうまく活用していきたいと考えている。どちらかを善、どちらかを悪とするのではなく、それぞれの得意なところを組み合わせる。それが、つくり手としていちばん誠実なやり方ではないかと思う。
結局、何を見ればいいのか
見るべきは「由来」ではなく、成分ひとつひとつの性質と、配合量、そして自分の肌との相性だと思う。気になる成分があれば、天然か合成かというラベルで判断せず、その成分そのものについて調べてみる。新しい製品は、少量から試してみる。
天然だから安心、合成だから不安、という二択から、一歩だけ離れてみる。それだけで、製品の選び方はずっと冷静になるはずだ。

